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福岡家庭裁判所小倉支部 昭和53年(家イ)1007号 審判

申立人 平野緑

相手方 平野則子 外三名

主文

住所 北九州市○○○区○町×丁目×番××号

弁護士○○○○

を被相続人亡平野茂夫の相続財産管理人に選任する。

遺産分割終結に至るまで、相続財産管理人に別紙目録記載の有価証券の保管を命ずる。

相続人等はその保有する上記目録記載の有価証券を相続財産管理人に対し、直ちに引渡せ。

(家事審判官 助川武夫)

別紙〈省略〉

〔参考一〕 申立代理人の上申書(抄)

一 申立人と相手方則子外三名は、いずれも被相続人平野茂夫(昭和五三年九月一三日死亡)の相続人であるところ、相続開始後同被相続人の相続財産について、遺産分割の協議をしてきたが、協議が整わないため、申立人は、昭和五三年一二月七日御庁に対し、遺産分割調停の申立をなした。

二 ところで、被相続人の相続財産として現在までに判明している物件は別紙遺産目録記載のとおりである。このうち、

1 有価証券関係

(1)ないし(22)、(25)、(30)ないし(36)

2 預貯金関係

(1)、(2)

3 株券関係

(1)ないし(7)、但(7)のうち無償新株七二六株を除く。

(8)ないし(17)、但(8)のうち無償新株二一〇株を除く。

について、相手方平野則子は、相続開始直後の昭和五三年九月下旬頃他の相続人らに無断で被相続人居宅から持ち去つてしまつた。

尚遺産目録記載のその他の物件については、現在申立人が占有管理している。

三 申立人は相手方らとの間に上記のとおり、相続開始後遺産分割について円満な協議をすべく努力してきたが、相手方ら中でも則子は、頑なに分割協議に応じないばかりか、上記搬出物件についても、申立人らの前に提出することがなかつた。

四 申立人は御庁に対する遺産分割調停申立後、相続財産の確認の意味もあつて、相手方則子に対し、前記搬出物件を調停の際に持参するよう再三要請してきたが、同人はこれにも応じない。

五 ところが最近になつて、相手方則子が、その搬出物件の一部を換金しているという事実が、取扱い銀行の連絡で明らかになつた。それによると前記遺産目録のうち二、有価証券関係(35)記載の○○信託銀行取扱いにかかる貸付信託五口、元本合計五〇〇万円について満期前に同人が解約換金したということである。

六 申立人は、早速相手方則子に対して、遺産未分割の現在において、勝手な行動をとらないよう注意したが、同人がこれに応ずるはずもなく、悪くすれば、その他の搬出物件についても換金する恐れなしとしない。

七 そこで申立人は、御庁に対し被相続人の相続財産について相手方則子が現在占有保管中の物件はもちろん、申立人が占有保管中の物件についても管理人を選任され、同管理人をして、占有管理が誠実に行なわれるようにされたく、本件申立に及んだ次第である。

〔参考二〕 抗告審(福岡高昭五四(ラ)六七号昭五四・七・三一決定)

主文

本件抗告を却下する。

理由

抗告人らは、「原審判を取消す。本件を福岡家庭裁判所小倉支部に差戻す。」旨の裁判を求め、その抗告理由についてはなんらの主張もしない。

まず、本件抗告の適否について判断する。原審判は、事件申立人の遺産分割調停申立につき、原審が家事審判規則一〇六条一項による必要な処分としてしたものである。ところで家事審判法一四条は、審判に対しては最高裁判所の定めるところにより即時抗告のみをすることができる旨を定めているところ、家事審判規則一〇六条二項は、家庭裁判所は相当であると認めるときは同条一項の処分を取消し、又は変更することができる旨を定めているが同条一、二項による処分に対して即時抗告をし得る旨の規定は同規則にないから、結局、原審判に対しては即時抗告をすることはできないものと解するのが相当である。

よつて、本件抗告は不適法としてこれを却下することとし、主文のとおり決定する。

抗告理由書〈省略〉

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